マヂカルラブリーno寄席(2021)を観た|ランジャタイはなぜおもしろいのか

面白かったもの

マヂカルラブリーno寄席で笑いすぎてお腹がちぎれた。980円で配信チケットが買えるので観ていただきたいです。視聴できるのは1/3の21:00までとのこと。

・M-1チャンピオンとなり名実ともに覇者となったマヂカルラブリー

・M-1敗者復活戦ネタ後に国ちゃん劇場を開演しお茶の間を沸かせたランジャタイ

・「実力派コント師」としてキングオブコントの決勝でハープと切り絵を披露したザ・ギース

・「勇者ああああ」で地下600m以降を統べているモダンタイムス

・新年会で爆笑問題太田さんと喧嘩していた脳みそ夫

・もうほとんどホアキン・フェニックスこと永野

本来、このメンツにゴー☆ジャスコウメ太夫が入ろうとしていた(ていうか昨年は参加していたらしい)とのことだから恐ろしい。高熱を発した時に見る夢じゃん。もうほんとうに全芸人さん面白かった。

お腹を抱えて笑いながら、このライブで「ランジャタイがなんで面白いのか」「ランジャタイがなぜ好きなのか」が自分の中で少しだけ理解できたので備忘までに記しておきたい。

(あくまで自分がなぜ面白いと思うのか・好きだと思うのかなので、皆さんは各々の楽しみ方をしてください)

目次以降、ライブ・ネタの内容も書いてしまうのでご注意ください。

「漫画の話は?」

このライブの潮目を変えたのは間違いなくランジャタイ、そしてマヂラブ野田さんの一言だった。

ここまで書いて、改めてランジャタイのネタに触れようと思ったのだが、全然説明できる気がしない。ごちゃごちゃしたらすみません。

ランジャタイは「漫画」(ゴリラバスケットゴリラ)のネタを披露。副題どういうこと? と思った人は配信チケット買って観てください。

国崎さんが「漫画家になろうと思いまして」と言いはじめる。「ずっと漫才やってきたのに……どういうつもりでやってきたの?」と戸惑う伊藤さん。「これ(漫才)が漫画じゃないってことに気がついて」と国崎さん。

「マイクもあるし。横に(居るの)誰ってなっちゃって……もみあげの化け物でしょ?

「違います」

「絶対そうだよね。化け物だよね。歩くんでしょ!?!?!? 飛ぶんだよね!?!?!?!?!?!??!?!

ここからしばらく国崎さんが伊藤さんを「もみあげの化け物」と断じて問い詰め続ける。伊藤さんは懸命に「自分はもみあげの化け物ではない」と否定する。その中で、客席に座る魅惑の何かさんがステージ上のふたりに言葉を投げかけたのであった。

「漫画家は? 漫画家の話は?」

そもそもこのライブは感染防止のため無観客で開催されていた。出番の時以外、出演者はがらんと空いた客席に座ってネタを鑑賞する。そんな中で、野田さんは客席から野次るひとことでもって、ネタの「外部」からステージに介入したのであった。

ネタの「外部」からツッコミが入る形式といえば「あらびき団」が思い浮かぶ。ネタではないが、VTRを逐一止めてツッコミを飛ばす「相席食堂」の躍進も近年目覚ましい。今回のライブに一番近いのは、関西の人ならなじみが深いであろうオールザッツ漫才だろう。

とにかくこの村上さんの右腕的存在さんのひとことでランジャタイのネタ、そしてこのライブはまるきり変質してしまった。全出演者に野次が飛ばされるようになってしまったのである。今見返すと、マヂラブのネタ中に客席が静かだったのがめちゃめちゃもったいない。

バスケットボールゴリラ漫画(ゴリラ)

ネタは進み、国崎さんが『ダンク決めろ!かっぺいくん』というバスケットボール漫画を描いたと言いはじめる。タイトルを聞き「ギャグ漫画?」と戸惑う伊藤さんに、国崎さんは「ギャグ漫画じゃない」と言い張る。

「主人公見る? バスケットボールを片手に持ってね……かっこいいでしょ」

「イケメンなの?」

「ゴリラね」

「ゴリラ?」

「バスケットゴリラだから」

「どういうこと?」

「バスケットゴリラ漫画だから」

「ギャグ漫画じゃん」

「ギャグ漫画じゃない!バスケットゴリラ漫画!」

「ジャンルでいうとなんなの」

バスケットゴリラ漫画ゴリラだ!!!!

以降、延々とこんなやり取りが続く。「ギャグってこと?」 「ギャグ漫画じゃない!ゴリラ漫画ゴリラ!」 「ゴリラなの?」 「ゴリラじゃない!バスケットボールゴリラ漫画だ!!!!」 「ゴリラ漫画なのね。ゴリラじゃないのね」 「バスケットゴリラ!最高のバスケットゴリラ漫画だ!!!」 「動物漫画ってこと? マキバオーとかと同じ?」 「マキバオーじゃない! バスケットゴリラ漫画だ!!!」……

膠着した状況の中で、でっかいエビさんが再びネタの外から言葉を投げる。

「いいってもう 進めろって 理解しようとするな 理解しようとすんなって 相手すんなって!!!」

漫才中、「(相方を)理解しようとするな」「(相方の)相手すんなって」とヤジられようとも、それでも伊藤さんは必死に国崎さんを解そうとする。が、国崎さんは自分が描いたものはギャグ漫画ではなくバスケットボールゴリラ漫画あるいはバスケットボール漫画ゴリラだと主張し続けるため一向に話は進まない。 不得要領の二人の会話に耐えかね、客席からの野次がさらに加速する。

「伊藤、付き合うな もういいって」

「殺せそいつ」

「何分やる気なんだ 終わりなのかこれで 本編入るのか」

これだけ野次られようとも、伊藤さんはなおも国崎さんの描いた「バスケットボールゴリラ漫画ゴリラ」の全体像を理解すべく質問を重ねる。とうとう、そんな伊藤さんにも野次の魔の手が襲いかかったのであった。

「お前もバカだろ」

「お前だけだよ興味持ってるの」 

「お前こいつしか友達いねえんだろ!!!!」

ランジャタイがなぜ面白いのか・好きなのか

(自分の中で)「なぜ面白いのか」「なぜ好きなのか」は村上のよだれさんがツイートしている「ランジャタイの正しい見方」で大部分が説明できる。

もちろんダイナミックな動き、突飛な展開、意味不明な発想……そういったものが好きだという前提はあるが、それ以上に伊藤さんが国崎さんの話を聞き、理解しようと努めるのが好きだし、面白いと思う。

今年の敗者復活で披露した「欽ちゃんの仮装大賞」(仏が沼にはまったよ)。

「欽ちゃんの仮装大賞に『仏が沼にはまったよ』という演目で出るから、そばで焼き鳥を焼いていろ」と言い出す国崎さん。普通は「なんでだよ→鳥を焼かない」で終わるくだりだが、「焼き鳥焼くの!? 何!? どういうこと!?」と戸惑いながらも伊藤さんは鳥を焼く。なんなら、仏にならんとしている国崎さんを引き留めてまで、「どうやってやればいいの?」と質問する。

これらを村上殺しさんが言うような「頭おかしすぎて何言ってるかわからないやつ」「友達いなさすぎてそんな奴でも手放したくないから話し理解しようとするやつ」のやり取りととらえてしまうと、好きすぎて苦しい。理解しえぬものを理解しようと努め、相手に近寄り親密さを築こうとする在り方。これこそまさしく現代を生きる我々に必要なものではないでしょうか。

ランジャタイのネタではちゃめちゃに笑ったが、 永野さんの「ネタのブリッジだけで売れっ子になったピン芸人」も腹抱えて笑った。初めて観ました。野次なくても笑ったろうけど、野次ありでもっと笑った。観れてよかったな〜……

「おじいちゃん♪おばあちゃん♪長生きしってっねっ♪」

「売れるわけねえだろ」

「なめんなよ」

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