太陽支——電柱前史
「日も落ちたし、徘徊でもするか〜!」と路地に繰り出したところ、妙な電柱を目撃する。
太陽支、と書かれている。「電柱のパーツの名称なのかしら」と思って調べたのだが、何も出てこない。手を替え品を替えいろいろ検索したものの、終ぞ情報は得られなかった。「も、もしかして、政府は太陽支の情報を隠蔽している……!?」とひとりで興奮してしまう。
きっと、太陽支は文字通り、太古の昔から太陽を支えているに違いない。もし太陽支が倒れようものなら、支えられていた太陽が地球と衝突し、世界は滅びる。
太陽支を攻撃することで世界滅亡を目論む勢力だってごまんと居たはずだ。昔の偉い人たちは最悪のパターンを回避するために、カモフラージュとして太陽支のフェイクを至る所に建て、その際におまけとして「せっかくだし電気のインフラ構築にでも役立てますか」と電線を張り巡らせたのであろう。
つまり太陽支とは電柱のオリジナルであり、太陽支の歴史、つまり太陽支史(たいようしし)とはすなわち電柱前史なのである。
太陽支を倒壊させんとする勢力を駆逐した偉い人たちは、二度と人類を世界滅亡の危機に晒さないよう、太陽支の情報を隠蔽した。そして幾星霜を経て今日に至るまで、ごく限られた人間しかこの事実を知る者は居なかった——おれが発見するまでは。「気にくわないことがあったら太陽支を蹴りつけるぞ! まずは三億円用意しろ!」と政府に要求を突きつけることもできるのだが、さしあたっては暮らしに満足しているので、やめておいてやることにする。
しかし、ほんとうに太陽支の情報がどこにも見つからない。いったいなんなんだろうこれ。知ってる人がいたら教えてください。
スパイスカレーに凝る男なんて
スパイスカレーに凝る男なんて、突然キャンプにハマりだして大して使いもしないホットサンドメーカーの写真を自慢げにSNSにアップしたり、聞いたことのないメーカーのクロスバイクをこれ見よがしに乗り回していたり、ちゃんと筋トレをしていたり、仕事でも頼られたり、優しかったり、人間ができていたりするような男だからろくなもんじゃないと思っていた。
のだが、高円寺の青藍のスパイスカレーを食べたらこれがま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜美味しいこと美味しいこと。びっくりするくらい美味しい。あと見た目も美しかった。ただ、このお店はたいへんな人気ぶりなので、仕事が終わるころには大抵品切れになってしまっている。「なんとかして毎日スパイスカレーを食べたい」と思い、自分で作ることにした。
みんなはさ、おれがさ、スパイスカレーを作るような男になったらさ、きっとブロックしますよね?
— 渡良瀬ニュータウン (@cqhack) July 19, 2021
(カレーを作りはじめたことを報告しても、フォロワーは減らなかった。寛大なフォロワーでよかったです。)
これは友人に教えてもらったレシピをもとに作ったカレー。冷蔵庫にひなびたズッキーニがあったのでついでに入れた。
これは意気揚々とカレーを作りはじめたはいいものの、昨日の自分が食欲お化けになって肉を全部消費していたことに後から気づき、代わりにキャベツを入れたやつ。「動物性タンパク質が……足りない……」という味だったけど、玉ねぎを油でぐつぐつやってスパイス入れればもうなんでもカレー。
「カレーのカの字も見たくない」くらいになるまではずっとカレーを作り、食べるつもりです。
絶対、絶対無駄に高い自転車買ったり急にキャンプ行きだしたりしないって約束するから!スパイスカレーだけは許してほしい おねがい
— 渡良瀬ニュータウン (@cqhack) July 19, 2021
もしぼくが「緑を感じたい」「アウトドア用品とか興味出てきたんだよね」とか言い始めたら頰を張ってください。お前の居場所は、薄暗く、冷房の効いた部屋の、パソコンの、前だと言って。
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