銭湯における惑星直列、自分の身体の再発見

雑記

自分にとっての銭湯を宇宙だとすると、「水風呂系」とも言うべき惑星系が構成されている。つまりはあらゆる銭湯の要素が水風呂を中心に回っているわけである。

ぬる湯、あつ湯、ジェットバス、休憩(カランスペース)……そのそれぞれを水風呂を中心として巡り、副交感神経と交感神経をはっ倒すことで、脳と身体を「ピシッ」と「ぐでん」のあわい、なんかちょうど良い感じになる(=「ととのう」)。

銭湯に行くと、たまに軌道が合う人が居る。おそらくぬる湯やあつ湯に入る時間・休憩の時間がだいたい同じなので、「なんかこの人、水風呂で一緒になること多いな」となる人のことだ。1人居れば珍しい方だが、今日はなんと2人と軌道が合った。

よく行く銭湯の水風呂はあまり広くはなく、大の男が3人入ればもう入るスペースはない。そんな中、惑星A(自分)、惑星B(大柄な男の人)・惑星C(細身で眼鏡をかけた男の人)がたびたび直列に並ぶ。

なんたる偶然かと思いながらも、ご時世柄声をかけることは憚られる。ましてや、「いやあお二方度々水風呂でご一緒しますなワハハ、我々を惑星・水風呂を太陽だとするとこれはすごい確率でございますなワハハ」と話しかけるようなコミュニケーション能力ももちろんない。ただただ下を向いて、水風呂の中で湯によってぼやぼやっとした身体の輪郭を冷水で引き締めるばかりである。

水風呂に入ると、身体から発される熱が冷水を温め、ジッとしていると「身体の周りがもやもやする」現象が起こる。多分サウナが好きな人や交互浴をする人はよくわかる感覚だと思う。水風呂に入る前に冷水を浴びても、どうしても身体の周りがもやもやしてしまうあれである。

そんな時、身体を揺すったりすると熱のベールが取れて、もやもやが消える。水風呂に他の人が居ない時は、身体を揺すってベールを脱ぐのだが、人が多いとやはり動きにくい。

が、今日たまたま軌道が一緒になった惑星たちは顔を拭ったり、たびたび姿勢を変えたりした。その度に水風呂に波紋がわたり、熱のベールがはだけ、そこに自分の身体を再発見する。

「哲学者がなんか他者の視線によって自分が構成されるどうのこうの言ってたな」と思い出した。 水風呂に一緒に入る男3人は互いに干渉しない。話しかけもしないし、もちろんお互いの名前も知らない。けれど、それぞれのほんの些細な動作ひとつで波紋が広がり、冷水が身体の持っていた熱を奪い取り、新たな自分がそこに立ち現れる。

なんだかんだ言って冷たいので、水風呂に入る時はいつも手を祈るように組んでしまう。ふと見ると、惑星ふたりも手を組んで冷水に浸かっている。この狭い、冷水でひたひたの浴槽で、男3人が祈るようにしてお互いを暴きあっている。銭湯はいいなと思った。

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