実写版『カウボーイビバップ』1話感想|Netflixさん、ひどいよ

映画

好きな作品が実写化されることほど恐ろしいものはない。何しろ勝率の恐ろしく低い博打である。もちろん、『ヒメアノ〜ル』『ピンポン』といった文句の付け所のない作品も天文学的な確率で生まれる。が、たいていは、『ドラゴンボール』や『進撃の巨人』といった「ネタ枠」にすらならない、「まあ……実写……してたね……」作品と化す。

『カウボーイビバップ』が好きだ。そんな作品が実写化されることへの恐怖と、ほんのひとつまみの希望を胸に、実写版『カウボーイビバップ』の1話「カウボーイ・ゴスペル」を観た。そして、鑑賞後すぐにこの文章をタイプしている。

Netflixさん、これは、ちょっと、あまりにも、あまりにもひどいんじゃないですか。まだ1話しか観ていないが、かなりしんどい出来であると感じた。血涙を流してでも最後まで見通すつもりではあるが、現時点での感想を記したい。内容にも踏み込むので、未見の方は注意。そして、あくまでこの感想は個人的な意見であることもご留意ください。
 

「カウボーイ・ゴスペル」のストーリー


基本的には原作1話の『アステロイド・ブルース』に準ずる。レッドアイと呼ばれる大量のドラッグを組織から盗んだアシモフとその恋人のカテリーナの逃避行をスパイクが追いかける話である。
冒頭にはカジノでの戦闘シーン。劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』冒頭のコンビニ強盗シーンのオマージュになっている(※)。ちなみにカジノの名前は「ワタナベ・カジノ」。おそらく原作監督の渡辺信一郎氏の名前を拝借していると思われる。

(※)偉そうに書いていますが、記事公開時には全く気付いておらず、Postを読んでいただいた方からご指摘を受けてようやく分かりました。教えていただいてありがとうございました!

実写版『カウボーイビバップ』のなにがひどいか

キャラクタの描き方。これに尽きる。「実写版なんだしキャラの掘り下げは難しいだろ」「厄介オタクだコイツ」と思われるかもしれない。が、本当に、どうしても許せないシーンが1つあった。

それは先述したカジノでの戦闘後の一幕。そもそもこの戦闘で、スパイク・ジェットのご両名は賞金首をバンバン射殺している。賞金稼ぎは「生け捕り」が基本なのに。ってなわけで、生き残った賞金首を引き渡した後、報酬の少なさからふたりはビバップ号で口喧嘩……というところが問題のシーン。腹立ちすぎるから英語字幕でも日本語音声でも台詞書き起こそ。

【字幕版】
ジェット:お前が先走ったからああなった タナカの手下も捕まえてれば修理代は相殺できた
スパイク:言わせてもらうが、お前だって金歯の男を殺した ……ヤツの表情を?
ジェット:(笑う) 驚いてた
スパイク:(笑う) そして死んだ
ジェット&スパイク:(大笑い)

【日本語音声版】
ジェット:打ち合わせ通りお前が合図を待ってればこうはならなかった!タナカの手下2、3人分の賞金でまかなえたのに……全員殺しやがって
スパイク:殺すなって言ったそばから金歯野郎にぶっ放したのはどこのどなたでしたっけ!……あいつの顔見たかよ?
ジェット:(笑う) 「マジすか」、みたいな? 
スパイク:(笑う) あっさり撃たれてあの世行き!
ジェット&スパイク:(大笑い)

賞金稼ぎという稼業の関係上、スパイク・ジェットの身近に死が存在することはもちろん承知している。けれど、原作では殺した人間のことを下卑たジョークで揶揄して笑うようなキャラクターではなかったはず。原作でこんなこと言ってたっけ? 実写版だから不快に思っただけかも。

「あいつの死に顔見た? ウケるよな〜」じゃねえだろ。そんなひどいこと言うキャラなんかじゃないはず。おれの中のスパイクは、おれの中のジェットはそんなこと言わない。これがかなりげんなりしたポイント。完全に厄介オタクだ……アニメでも同じようなこと言ってたら教えてください。


フェイの描かれ方もちょっと嫌。原作より短い話数で実写化する以上、ストーリーの省略は大幅に必要になってくる。まだ1話なのでこれから諸々掘り下げられるのも分かる。しっかしいきなりナイフ持ってスパイクのこと襲うかね。原作ファンなのでそんなに本気で殺し合いされると悲しい気持ちになる。
  


んで、ビシャスは……ビシャスはなんなの? 初登場シーン、笑ってしまった。


なぜ大量にマグロが置かれた部屋の奥にこもっているの???? 競りか???? 競るんか???????
なんか、めちゃくちゃ安っぽい悪役になっちゃったな。ブロンドの女(ジュリア?)を見てあんなにやにやされましても。「愛しい人よ」じゃね〜んだわ!!!!! ビシャスがそんな笑うな!!!!! 戦いの中でこそ笑みを浮かべろ!!!!!!!!!!!!

ストーリーに違和感をおぼえたところ

アニメだとアシモフは「レッドアイを売りさばいて逃げようとする男」、カテリーナは「それに付き添いながらもどこか諦めている女」として描かれていた。が、実写版ではアシモフのキャラ付けが希薄になり、カテリーナが「ただただめっちゃ逃げたい女」になってしまっている。
アニメ・実写ともに、カテリーナがお腹に隠していたレッドアイをばらまいてしまうシーンが用意されている。これ、原作ではアシモフが「それ(レッドアイ)が潰れたら終わりなんだ、気をつけろ」って怒鳴るんだけど、実写版ではカテリーナが「(レッドアイを集めるの)助けて」って言うんだよね。レッドアイに対する執着がカテリーナ>>>>>>アシモフになっていて、「なんか違う……」と感じた。

それから、原作ではレッドアイが「動体視力がめっちゃ上がって銃弾とかもめっちゃ避ける薬」だったんだけど、今作では「とにかくキマって戦闘能力が上がる薬」になっている。


なので、1話の超名台詞である「目に頼り過ぎなんだよ。カメレオンじゃねぇんだ!そうあちこち見えねぇのさ!」はカット。なんてこった。一番好きな台詞なのに。

あとは要所要所に回想シーン・オリジナル要素が挟まってくる。回想シーンは全10話の中で色々回収したいなら仕方ないと諦められるが、オリジナル要素は少しキツい。1話で出てきたオリジナル要素は以下。

  • ジェットに娘が居る(お前隠し子いたのか)
  • 「組織」の存在(レッドドラゴンの名前は1話では多分出ていない)
  • 過去にスパイクが「フィアレス」と呼ばれていた(絶妙にダサいな)


とにかくオリジナル要素が挟まると妙な小っ恥ずかしさを感じるので、こんな感じで目を閉じてうなっている。ジェットの娘とかは今後のストーリーに関わるから登場してきたんだろうな……

実写版『カウボーイビバップ』よかったところ

菅野よう子の音楽はよかった。
それから、日本語音声はスパイクを山寺宏一、フェイを林原めぐみが演じている。せっかくなら原作通りの声で視聴するのがおすすめ。スパイクの一言目を山寺宏一の声で聞いた時はちょっと涙出ちゃったよ。「スパイクが帰ってきた〜!」って思った。あんなクソみたいなジョークで笑うとは思ってなかったけどな!!!! フェイの一言目でも感動した、けど泣かなかった。この時点で既に「この作品は多分ひどいな」と落ち込みながら観ていたので。
アクションはまあ……って感じです。序盤の戦闘でアサルトライフルの先端ふんづかんだりしてて、「熱くねえのか」と思ったりはした。

まあ2話以降も見ますが

なんにせよ1話だけ見てこうやってぎゃあぎゃあ騒ぐのはフェアじゃない。でもこれ以上見たくはない。でもカウボーイビバップをしっかり見届けたいという気持ちはある。ので、見ます。見ますけど? え? は? 見ますが? 『女の園の星』の情緒不安定になった小林先生みたいになっています。

明日からも頑張って観るぞ。

image:カウボーイビバップ公式サイト,Netflix,女の園の星

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