90分くらいの長さの映画ってほんとうにサイコー。120分の映画は重いし、60分の映画は消化不良に陥ることが多い。110分の映画も70分の映画もキリが悪い。それにひきかえ、90分の映画のちょうど良さたるや!
1時間の映画と1時間半の映画と2時間の映画だったら、絶対1時間半の映画がちょうど良い。たかだか2、30分しか変わらないのに、なんでこんなに90分くらいの映画がほど良いのかしら。
ということで、90分くらいの短めの映画で個人的に好きなおすすめ映画について書きます。80分〜100分くらいの作品8個。10分は誤差。なお、映画の長さはFilmarksに登録されているものを転記しています。
個人的な好みなので、青春映画・クライム映画・サスペンス映画が多めです。
フランシス・ハ(89分)
個人的なベストオブ・90分映画! 舞台はニューヨーク。プロのダンサーを目指すフランシスは、出版社勤めの親友ソフィーとシェアハウスして楽しく暮らしていた……んだけど、ソフィーが結婚を機に急に家を出て行くと言いはじめる。彼氏とも別れたばかり。ダンサーとしてもちょっと上手くいっていない。親友が結婚で人生のステージを変え、自分の元から離れる。いいことなしのフランシスが色々もがきつつ自分の人生をやっていこうとする、みたいなストーリー。
とにかく、フランシスというキャラクタが魅力的。彼女はお世辞にも世渡りが上手とは言えない。というか、とても不器用。ソフィーのベッドに靴下で上がり、「ねえそれやめてってば」と軽く怒られたりするし、食事会で急に愛を語り出して場を変な空気に変えたりもする(すごく好きなシーン)。
でも、フランシスはよく言えばとてもポジティブ。悪く言うと鈍感。何も気にせずずんずん進んでいく。計画性の類もないので、基本的に行き当たりばったりなのだけれど、その「ばったり」のエネルギーで全部なんとかしてしまおうとするのが見ていて気持ちいい。
モノクロ映画なので、最初は「おしゃれ風謎会話長回し映画なのでは?」と気構える方もいらっしゃるかもしれないが、そんなことは全然ない。テンポも良いし、どのシーン・カットを取ってもセンスを感じる。鑑賞後に嫌な気持ちが残らないのもポイント。ベストオブ・90分映画たる所以です。
出演・脚本・監督は『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグとノア・バームバックカップル。『レディ・バード』も93分。こちらももちろんおすすめ。グレタ・ガーウィグが書く・演じる、ちょっとこじらせてるキャラクタ、めちゃくちゃいいよな〜!
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image:映画.com
NEXT-ネクスト-(95分)
主人公のクリス(ニコラス・ケイジ)は「2分先の未来」を知ることのできる予知能力の持ち主。HUNTER×HUNTERのツェリードニヒの強化版だ!
クリスは能力を隠しつつカジノのマジシャンとして働いていたんだけど、ひょんなことからFBIに未来予知ができることがバレてしまう。FBIは「その能力使ってテロリストなんとかして」と協力を要請。でもクリスは断固拒否!
実は、「2分先の未来」しか見えないはずのクリスが、唯一見える「2分以上先の未来」があった。それはどこかのダイナーで男に絡まれている女性を助ける未来。クリスはその女性を「運命の人」だと信じ込んでおり、その「未来」が間もなく訪れることも知っている。
ということで、「運命の人と会わなきゃいけないの! FBIに協力してる暇なんかないの!」と予知能力をフルに駆使してFBIから逃走。運命の人と出会いたいクリス、クリスを捕まえて捜査に協力させたいFBI、激ヤバテロリストの戦いが始まる! といったストーリー。
どうやら賛否両論ある作品らしい。自分も初見時は「ンンッ!?」と声を上げてしまった。好きなんだけど。皆さんが「賛」の人間か「否」の人間か、観て教えてください。
ストーリーは賛否あれど、「2分先の未来予知」の描き方は秀逸。ニコラス・ケイジがシュッシュと音を立てながらたくさん発生するところも観れる。ニコラス・ケイジがシュッシュと音を立てながらたくさん発生するところを観たい方にはおすすめの映画です。
ちなみに原作はフィリップ・K・ディックの『ゴールデン・マン』という作品らしい。読んでないんですけど、どうやら「未来予知」という能力が共通しているだけで、全く別物の作品になってるご様子。原作ファン怒らなかったのかしら?
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アップグレード(95分)
最小限の動きでムダなく殺す! これが最新AI殺人術!
あらゆる技術が発達した近未来。事件に巻き込まれ妻を喪い、銃撃によって自らの四肢も動かせなくなってしまった主人公が、身体にAIチップを埋め込まれ、復讐を試みるという作品。
アクション映画に期待するものといえばバク転、過剰な吹き飛び、ド派手なアクションなのだけれど、『アップグレード』の主人公は最新のAIチップを埋め込まれているのでそんな無駄なことはしません。AIに身体機能を明け渡せば、あとは自動で敵をやっつけてくれます。
ナイフを避けるにも必要最低限の動きしかしない。体ちょっと動かすだけ。敵を殴るのも手をちょっと突き出すだけ。全てのアクションが最適化されており、「人間の動きではない」感が完璧に表現されている。
でも人間の感情は残っているから、「やばい! 敵ナイフ使ってきてるよ! どうする!」みたいな言葉は発する。AIが身体を勝手に動かしてナイフ奪い取って相手のこと殺しちゃうんだけどね。その「自動運転」の不気味さも丁寧に描写されている。この辺は予告動画見ると分かりやすい。
なんにせよ、とにかくアクションシーンが面白い映画。サイバーパンクっぽい世界観が好きな方もぜひ。ネオン、ギラギラしてます。
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手紙は憶えている(94分)
御年90歳、卒寿を迎えた主人公ゼヴは友人のマックスと介護施設で暮らしている。ゼヴは認知症が進行しており、前日の記憶もあやふや。最愛のパートナーの死すら忘れてしまうことがあるほどだ。
しかし、ゼヴとマックスはある計画を進行していた。実は、彼らはアウシュヴィッツ収容所の生存者。そして、ふたりの家族を殺した憎きナチスの兵士が名を変えてアメリカに渡り、今も平和に暮らしていることが分かってしまった。復讐だ! 復讐だ! 身体的に介護施設を出ることが難しいマックスから受け取った手紙を頼りに、ゼヴはナチスの兵士を葬る報復の旅に出る。
90歳のおじいちゃんが主人公なので、派手なアクションはない。なんなら復讐の旅の途中、泊まったホテルで起きて「ここは……どこだったっけ?」となるし、銃を持つ手もブルブル震える。終始、「おじいちゃん大丈夫? ……大丈夫!?!?」と心配になるのだが、よきところでマックスの手紙を見返して記憶を取り戻したり、マックスから電話がかかってきたりする。ありがとうマックス。
記憶を長時間保てない点が共通しているので、「老人版メメント」と呼んでいる。「認知症の語り手」というギミックを、90分かそこらの尺で活かしきった脚本がとてもすばらしい映画。
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THE GUILTY/ギルティ(88分)
緊急通報司令室に、現在進行形で誘拐されている女性からのSOSが入る。主人公のアスガーは問題を起こして一時的にオペレーターとして左遷されている警官。司令室から動かず、電話だけで事件を解決しようと試みるも……って感じのストーリー。
いわゆるワンシチュエーション・スリラー。カメラは司令室から出ず、アスガー以外は比較的のほほんとした司令室の中で、アスガーひとりが焦燥感に駆られている。電話越しなので、現場の様子も分からない。誘拐されている女性の子どもからの着電も入る。パトロール中の警官が追っていたのは別の車だった。問題が自らの手を離れ、どうしようもできない焦りがイヤな感じ。脚本がとても良い作品なのでぜひ。
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image:Amazon Prime Video
プリデスティネーション(97分)
今回紹介する映画の中で、一番あらすじが説明しにくい作品。すごく簡単に言うとタイムトラベルもの。バイオリンケース型のタイムマシーンが出てくる。なんでバイオリンケース?
ストーリーに言葉を尽くしたり、「あの作品が好きならきっと好きです」みたいなことを言うと鑑賞体験が損なわれる可能性があるタイプの映画。代わりに、派手なアクションはない。せいぜいイーサン・ホークが殴られて鼻血出したり這いずったりする程度。SFチックな描写も少なく、バイオリンケースに用意された錠前をかちかちやると時を遡ることができる。ねえ、なんでバイオリンケースなのさ?
ちなみに、Wikipediaを見るとあらすじで完全にネタバレを食らうので注意。過去の作品、特に名作だとストーリーの終わりまできっちり書かれてることが多いよね。踏まなくていい地雷は踏まずに、早く『プリデスティネーション』を観てください。で、なんでバイオリンケースなワケ?
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image:映画.com
最高の人生の見つけ方(97分)
モーガン・フリーマンとジャック・ニコルソンのW主演。ガンで余命宣告を受けた自動車整備士と死ぬほど金持ちの実業家が、「死ぬまでにやりたいことリスト」(元のタイトルでもある”The Bucket List”。邦タイトルもまあ……悪くはないんだけど)を作って、世界各国を飛び回る話。
めちゃめちゃ泣ける。たぶんこの映画は7、8回観てるんだけど、毎回「世界一の美女にキスをする」にチェックが入るシーンで涙腺がバカになってしまう。辛いことがあった時は毎回そのシーンだけ見ている。
きっとこの映画を観て、世界一高いコーヒーとして有名な「コピ・ルアク」のことを知った人も多いのではなかろうか。自分もまたそのひとり。知らない人は観て。クイズ番組とかでたまに出てくるから。
ちなみに、吉永小百合・天海祐希主演の日本版リメイクも出ている。こちらは観ていない。ちなみに、上映時間は115分らしい。この記事で紹介するには20分長い。
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image:ワーナー公式
ファーゴ(98分)
借金で首が回らなくなった夫が、実家から金を引っ張るために妻を狂言誘拐させようとする話。夫は実行犯としてチンピラふたりを雇うんだけど、計画性もへったくれもあったもんじゃなく、やることなすこと全部ダメになるのが悲しい。とにかく、悪いことをたくらむやつがみ〜〜〜〜んなバカなんだこの作品。
チンピラ役のひとりを名俳優ブシェミが演じているんだけど、こいつの「こずるい」感が半端じゃないのがポイント。大したことない小悪党感がすごい。一方で、もうひとりのチンピラ(演:ピーター・ストーメア)の不気味さといったら。ブシェミが話しかけるのを無視してタバコを吸う様、テレビを見ながらもっちゃもっちゃと食事を取る様、どのシーンを切り取っても恐ろしい。
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(ネタバレ)細かいけど好きなシーン|タップで開きます
義父が立体駐車場の屋上でチンピラに撃ち殺されたのを発見した主人公の最初に取った行動が「車のトランクを開ける」だったのがすごく好き。すごく短い時間で主人公の人間性を描写したいいシーンだと思う。せめて駆け寄ったりとかさ。してよ。すぐ死体遺棄のこと考えてるじゃん。こういう、細かいけど好きな映画のシーングランプリ、いつかやりたい。
image:映画.com
レザボア・ドッグス(100分)
言わずと知れたタランティーノの第1作。そして、タランティーノ監督作品の中では最も短い映画だ! 言わずと知れているのでコメントは少なめ。ストーリーは簡単。宝石強盗に入ったら余裕で失敗して、「なァんで失敗すんの! 裏切り者居るでしょこれ!?」と集合場所の倉庫で癇癪を起こし合うといった具合です。『レザボア・ドッグス』といえば、格好良すぎるオープニング。『ベイビー・ドライバー』と並んでいちばん好きな映画の冒頭10分だ。
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image:映画.com
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