2021年4月から5月にかけて読んだり聴いたり観たりしてよかったものをまとめます。
▼2021年3月のよかったものたちはこれ。本とマンガのみですが……葬送のフリーレンは引き続き推しているので、ぜひ。
本
本、あんまり読めなかったな〜……最初から最後まで読める本が年々少なくなってきた気がする。
一人称単数 – 村上春樹
村上春樹の短編は好きなんだけれども、「昔も同じようなこと書いてなかったでしたっけ……?」みたいな作品が多かったのが正直な感想。
『石のまくらに』で67678の短歌(午後をとおし/この降りしきる/雨にまぎれ/名もなき斧が/たそがれを斬首)が出てきた時に定型警察が出動するなどした。
収録作品の中だと『クリーム』が一番良かった。仲良くもない女の子にピアノの演奏会に誘われたので、のこのこと山の上の会場に出向いたら、会場にはひとっこひとり居ない。諦めて近くの公園でぼーっとしていると、突然、激ヤバおじいさんに「中心がいくつもあって、しかも外周を持たない円について考えてみろ」と話しかけられ……といったあらすじ。
こんなまとめ方をしてハルキストに刺されないか心配。でも事実。そして面白い。
令和元年のテロリズム – 磯部涼
川崎市登戸通り魔事件、元農林水産省事務次官長男殺人事件、京アニの放火事件を”テロリズム”ーー「恐怖の拡散」を目的に「違法な暴力」を振るう行為ーーとして扱い、その経緯や共通点について記されている本。80-50問題(80代の親、50代の引きこもり)をはじめとした平成時代の問題が「先延ばし」されたままはじまった令和元年にこれら3つの事件が起こったことを見つめ直す、的な内容。
通り魔事件(あるいは「刑務所に入りたかったから」「死刑になりたかったから」的な動機から起こった事件)が取り上げられる際、「1人で死ね」的な言説はSNS上に氾濫しがちだし、なんならテレビでも大物司会者が同様のことばを言い放つことすらある。
「僕が自分の精神的苦痛の経験を書くのは、それが何か特別だったり珍しいと思ってるからじゃない。そうじゃなくて、多くの鬱の形は、個人の枠組みや心理学の枠組みではなく、むしろ非個人的かつ政治的な枠組みを通すことで、もっとも理解でき、そして闘うことができるという主張に僕が与しているからだ。」 – 木澤佐登志のレット・イット・ディ(プレッション)【来るべきDに向けて】
読んでいて、なんとなくこの一節を思い出した。
個々のケースだけを見つめれば「なんて身勝手な犯行だ」と憤るのも分かるのだけれど、その犯行が一体何故起こったかを考えると、難しい。引きこもりだったり、貧困だったり、虐待だったり、それは社会の病理であって、いわば「環境ガチャ」「親ガチャ」の劣悪なドロップ率にも依る(「ガチャ」、好きな言葉ではない。けど、すごくわかりやすい表現)。
マーク・フィッシャーが「鬱の形」を個人の脳・心の動きではなく「非個人かつ政治的な枠組み」から理解しようとアプローチするように、事件を1つのものと見ず、社会の大きな連なりの中のねじれとして捉えていくべきだ。
つまりはこれらの事件は個人の責任ではなく、社会や政治の責任でもあるということ。組織の中の事故やヒヤリハットと同じですね。
父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話 – ヤニス・バルファキス
いろんな本屋で平積みされてる本。「タイトルでこんなにハードル上げて大丈夫?」とは思ったが、すらすら読めたし面白かった。第二次世界大戦中の収容所でタバコが通貨として扱われていた話が特に面白かった。タバコは腐らないし、喫煙者にとっては欠かせないものなのでみんなが価値を共有できる。確かに通貨になってもおかしくはない。
タバコでデフレが起きる仕組みが説明できるのも面白かった。:
ある晩、連合軍が収容所の近くの地域を爆撃した。次第に爆撃が近づき、収容所の中にも爆弾が落ちはじめた。捕虜たちは生きて朝を迎えられるかビクビクしながら夜を過ごした。
翌日、タバコの交換価値は急上昇した。あたりに爆弾が落ち、不安に苛まれていた捕虜たちが、夜通しずっとタバコを吸い続けていたからだ。翌朝、タバコの総量は他のものにくらべて劇的に減っていた。以前ならタバコ5本で板チョコ1枚と交換だったのに、タバコ1本で板チョコ1枚と交換できるようになった。
縁もゆかりもあったのだ – こだま
夫がハワイで挙げられる結婚式の参加を「俺に海は似合わない」との理由で断固拒否していたのに笑った。でも、そういう感覚、めちゃめちゃ分かるな〜……友人がハワイで結婚式を挙げるとなったら、少なくとも3テーブルは友人たちだけで埋まっていてほしい。自分の知己が1テーブルに満たないハワイでの結婚式は、ぼくも断ると思う。「浮かれ」や「不釣り合いさ」を他人にあまり見せたくないから。
音楽
Songwhipという便利サービス(特定の楽曲・アルバムを配信している全てのサブスクへのリンクをシェアできる神サービス)を使ってみます。どう表示されるかは特に試してない。ていうかみなさんこれ知ってましたか? 早めに教えてくれませんかこういうの? 約束ですよ本当に。
リリースされたばかりの曲だけではなく、最近はじめて聴いた曲・アルバムも含みます。
Actual Life(April14 – December 17 2020) -Fred again..

17.Marea(We’ve Lost Dancing)が2月に先出しされていたんだけど、この曲だけで結構涙ちょちょぎれてた。
This year we’ve had to lose
Our space, we’ve lost dancing
We’ve lost the hugs with friends and-
And people that we lovedAll these things that we took for granted
If I can live through this next six months
Day by day
If I can live through this…
What comes next will be marvelous.
コロナ禍でハウス、ひいては音楽業界が苦しい中で、それでもこんなアルバムが出るんだから本当に泣いてしまう。「私たちはダンスを、友人とのハグを、そして愛すべき人々を喪った」「もう半年、1日1日生き延びれば、次に来るなにかは、きっとすばらしいものになるはず」だなんて! 泣きながら踊れるハウスだ。
Chicken Zombies – Thee Michelle Gun Elephant

01.ロシアンハスキー と 02.ハイ!チャイナ! が特に好き。5月でミシェルとThe Birthdayのアルバムをたくさん聴いたんだけど、このアルバムが一番好きだな。
PICNIC – Grace Aimi

01.Eternal Sunshine を聴いたその日から爆推ししてたアーティストのアルバムがようやく……嬉しい……MVもめっちゃ好きなので見てほしい……
WINK – CHAI

CHAI、「やばい……どの曲も最高だけどsayonara complexが良すぎてこればっかり聴いちゃう……」って感じだったんだけど、このアルバムの02.チョコチップかもね(feat. Ric Wilson)と 04.END と08.IN PINK(feat.Mndsgn) がsayonara complexを超えて好き。「1アルバムで3曲超えることある?」ってひとりで興奮してた。
特にMndsgnとの曲が最高。MVのファッションもすてきだ……
Thumbnail:Fred again.. feat. The Blessed Madonna – Marea (We’ve Lost Dancing) (Official Audio)@YouTube
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