2021年7月のよかったものたち

面白かったもの

2021年7月に触れてよかったものをまとめる。アニメ・演劇・音楽・本……いろいろよかったです。
結局、オリンピックは開会式の映像を少し目にした以外は何も見ませんでした。代わりと言ってはなんですが、たくさん、カレーを、作りました。本当に代わりと言ってはなんですが。

オッドタクシー(ODDTAXI)


間違いなく7月に一番のめりこんだのは『オッドタクシー』(ODDTAXI)だった。全13話+オーディオドラマ13話を2日間で完走し、海外サイトを読み漁り作中のギミックの考察をまとめたりもした。
オッドタクシーの「幸せのボールペン」についての考察をまとめた記事

放送が終わって2ヶ月ほどだけれど、いまだにTLで「勧められたからオッドタクシー観た やばい すごすぎ みんな観て」といったツイートを目にする。
未見の方々は、「このアニメを勧めてくる人たち、全員語彙力無さすぎでは?」とお思いかもしれない。実はこの言葉の不自由さ具合は、作品を鑑賞した人々の気遣いの産物であることはご存知か?

オッドタクシーの面白さを過度に言語化する行為は、未見の人の「オッドタクシー体験」を損なう危険性を孕んでいる。なので、本作については皆一様に「やばい」「すごい」しか口にしないし、口にできない。おおっぴらに作品について言及することはできないのは、むずかゆい。「おすすめしたいのにおすすめできない」「話したいのに話せない」ことの煩悶が、「やばい」「すごい」などのボキャブラリが終わっているレコメンドワードとしてアウトプットされてしまうのだ。

ただ、オッドタクシーを見た人しか集まっていないクローズドな場所で、何も気にせず作品について語るのは、もう楽しくって仕方がない。秘密を共有する、いわば共犯者のような関係になれるのでおすすめ。まだ観ていない人は早く観よう。「こちら側」の人間になろう。最後、猗窩座みたいになっちゃったな。

▶︎オッドタクシーはAmazon Prime Videoで観れるぞ!

ロロ『校舎、ナイトクルージング』

2021年6月のよかったものとして前作『いつだって窓際であたしたち』を挙げたが、今作はそれ以上によかった。

幽霊が出ると聞いて深夜に学校に忍び込む学校の人気者と友人カップル。昼は学校に行けないので、教室の至る所に盗聴器を仕込み、夜な夜なその音を楽しむ不登校の女の子。それから幽霊。本来重ならない昼/夜、生/死が半宵の教室で出会い……というストーリー。

ハイライトは、望月綾乃演じる(逆)おとめが録音したクラスが賑わう音を使って、夜の教室で昼休みを再現するシーン。その瞬間、教室は夜でもあり昼でもあった。その重なりの「のりしろ」として、収拾された音が、あるいは将門と(逆)おとめの交流が存在した。

(逆)おとめと「音」は生/死の「のりしろ」ですらあった。(逆)おとめは幽霊ちゃんとも交流し、彼女が集めた……というよりリスナーとして作り上げている楠木くんの音声は、過去の人物であるはずの幽霊ちゃんの想い人と奇妙にリンクする。昼、夜、生、死、過去、現在が接続され、同一の空間に存在する。泣いてしまう!

(逆)おとめが集めた様々な場所で集めた音声のひとつひとつに物語が含まれていることにも、涙がちょちょ切れた。教室の真ん中で、隅で、カーテンの中で、ある者は噂話、ある者は映画の話、ある者は崎陽軒のシューマイ弁当の蓋を開ける……(逆)おとめはそのひとつひとつを想像し、そして自分もその物語に参加しているように振る舞う。椅子にかすかに残っているはずの体温を慈しむ。

昼休みにその場にいる生徒たちは、全ての物語に参加することはできない。けれど、夜の存在である (逆)おとめにはできる。丹念に集めた音を鳴らし、ひとつひとつの物語にリスナーとして参加する。もちろん、実際には昼の物語に干渉することはできない……まるで幽霊のように、佇むだけの存在。けれど、教室で織りなされる物語を丁寧に眺め、そして反応を返すことができる。まるで、彼女が憧れる、構成作家のように。は〜〜〜〜〜〜もう本当にいつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校……

Ginger Root – Juban District

アグレッシブ・エレベーター・ソウル(?)の旗手、Ginger Rootの新曲だ! アグレッシブ・エレベーター・ソウルはGinger Rootが自称する自身の音楽ジャンル。「エレベーターにいるみたいにチルくて、でもときどき叫んだり、アグレッシブになる」ようなサウンドとのこと(※1)。

新曲“Juban District”でも「ときどき叫んだり」している。コーラス部分で一気に「アグレッシブ」になるのは名曲”Weather“との共通点。シャウト(というには少し優しすぎ、耳触りがよい、つまりとてもいい声)+ハーモニー、とてもツボ。

“Juban District”の1月前にリリースされた“Loretta”が天地がひっくり返るほどよかったので、新曲へのハードルが一気に高まり心配していたのだけれど、


何も心配要らなかった。そもそもどの立場から心配しているのか。全ての曲を泣きながら聴け。

そんなGinger Rootの新EP『City Slicker』は8月20日にリリース予定! みんなも聴いてエレベーターにいるみたいにチルくなろう。

※1 引用:Ginger Root(ジンジャー・ルート)「RIKKI」ロングインタビュー(後編)「僕はすぐに取り組みたいんだ」

石井遼介『心理的安全性のつくりかた』

話題になっていたので、会社のお金を使って読もうと画策していたら、色々あって手元に届いた本。結局会社のお金は使っていません。会社のお金で学びたかった。「会社のお金で」の部分が大事なので、「学びたい」の部分は「カニを食べたい」「酒を飲みたい」などにも置換できます。もちろん冗談です。めちゃくちゃ学びてえなホント……ハ〜……学びたい……

感想等は以下記事にまとめた。
『心理的安全性のつくりかた』の感想と自分なりの要約

かなり前に、Googleのre:work(「効果的なチームとは何か」を知るに目を通してはいたが、その内容をおさらい+αできたのでよかった。

川上弘美『わたしの好きな季語』

歳時記に載っている季語を1つ引き、その言葉について川上弘美が思い出とお気に入りの俳句を記すエッセイ集。作中に引かれていた俳句の中でお気に入りのものをいくつか引用する。

朝すでにほろびのひかりみす湖(うみ)薄暑 山上樹実雄

豆飯の湯気を大事に食べにけり 大串章

雷が落ちてカレーの匂ひかな 山田耕司

つくつくぼーしつくつくぼーしばかりなり 正岡子規

炬燵出ずもてなす心ありながら 高浜虚子

正岡子規と高浜虚子の句は本書を読む前から知っていたけれど、川上弘美も挙げていたので嬉しかった。虚子のこたつの句についてはしっかり「わかる……。」とも書いている。わかる……。

川上弘美の俳句は句集『機嫌のいい犬』や2003年の『文藝』川上弘美特集などで読める。『わたしの好きな季語』内では季(すもも)の章で自身の句、「白シャツになりすもも食ふすもも食ふ」を紹介している。いいよな〜この句も。

川上弘美の好きな俳句をいくつか挙げて、おしまいにする。

はつきりしない人ね茄子投げるわよ
あなたきらひですひよ鳴いております
不機嫌やプールの水の満々と
電極に負イオン寄れる寒さかな
花冷や義眼はづせし眼のくぼみ
人なりにズボン脱がるる良夜かな

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